新型スープラとBMW、素材は同じだけれど料理人が違う二台

新型スープラはトヨタ快進撃の狼煙となるか？

新型スープラがBMWのZ4とプラットフォームを共有していることは今や周知の事実となっています。車業界ではこういったプラットフォームの共有は良くあることです。

特に社内で繰り返し同じプラットフォームを使うのはコストの面から見ても当然の選択肢となっています。車を開発する毎に毎回プラットフォームから全て新開発していたのでは車の価格が尋常じゃない値段になってしまいますからね（笑）

例えば車ファンの間では有名であると同時に憧れの対象であるFRスポーツカーのマツダ「RX-7」なども後継車の「RX-8」とプラットフォームを共有しています。

しかしマツダRX-7とRX-8を「ガワだけ変えた車だ！」と判断する人はいないはずです。なぜならプラットフォームが同じだけで、それ以外は全く別の車に味付けされているからです。

私も7と8どちらも乗ったことがありますが全く別の車です。そもそも4ドアと2ドアというデザインやボディパッケージ上の違いもありますし開発コンセプトも違いました。

そしてなにより乗り味が全く違いました。RX-7はどちらかというとかなりパワフルでピーキーに作られているのに対して、RX-8は非力ですが軽量感を追求した車という感じでした。「同じプラットフォームである」と一言で言ってもメーカーの味付け次第で別物の車になるのです。

「何を今更」と言われてしまうかもしれませんが、何故か同じことを日本メーカーと海外メーカーが協業すると「パクリだ」「外見だけ変えた」などと批判されてしまうのです。

今回の新型スープラでも同じ声が随所であがっています。

しかし新型スープラとBMWZ4はハッキリと差別化されており、それは開発段階から厳格に定められていました。

スープラとBMWZ4、協業ではあるが個別開発な兄弟車

スープラとBMWはプラットフォームとエンジンこそ共有しているものの、それ以外の開発ではトヨタ、BMWが別々に行っています。このことについてBMWZ4の開発者はパリモーターショーにて「プラットフォームを共通とはしているが、スープラの内外装やその他については「トヨタが独自で行う」という話となっている。」とインタビューに答えています。

新型スープラのすべて、74、75ページ参照

これはつまり「素材は同じ物を使うが私はフランス料理を、彼は日本料理を作るんだ。」ということと同じことです。使っている物は同じでも調理する人によって料理って全く別物となりますよね？

車だって同じです。先述したRX-7とRX-8のように同一メーカーが開発しても全く別物の車となるのに、国内メーカーのトヨタとドイツ車メーカーのBMWが個別に開発して全く同じ物が出来上がるハズがありません。

だからスープラとZ4は共有部品こそあるものの「ガワだけ変えた車」などでは決してないのです。どちらもメーカーの魂が込められたスポーツカーになっています。

また、余談となりますが共有元となっているBMWZ4は先代まではどちらかというと「ラグジュアリーにオープンドライブ」を楽しむ車でしたが、スープラと同時に開発された現行BMWZ4はカリッカリの戦闘機になっています。ですのでZ4とスープラで共有しているプラットフォームも軟弱な物ではなく限界性能を高めたピュアスポーツカーに相応しい物となっているのです。

スポーツカーは儲からないがメーカーの顔になる

少し前にトヨタ86が出てくるまでのトヨタは車好きの間では「クソつまらないメーカー」と不名誉なイメージを持たれていました。

なぜなら儲けを第一にとって「売れる車」しか作らなくなったからです。売れる車とはすなわちミニバン、コンパクトカー、SUVなどです。まぁ社会がこういった車を求めていたのでトヨタが間違っていたとは全く思いません。実際スポーツカーって開発費の割に売れないし儲からないんです。目先の利益のことだけを考えるのであれば作る合理的な理由は見当たりません。

しかし当然の結果としてトヨタは「車好き」という少数派の客層に逃げられてしまったのです。更にそれだけじゃなく「トヨタ＝無難」というイメージがあまりにも強固に付きすぎてしまいました。品質は高いし通常用途では全く問題はないけれどただそれだけ…刺激や官能性のような魅力を持ち合わせたメーカーではなくなってしまいました。

実際スポーツカー大好きな私も車を買う際にトヨタの車を調べるのが一番最後になってしまっていた時期がありました。

「車好きなんて今の時代少数派だから問題ないだろう」と考えるのかもしれませんが、車好きが見向きもしない＝車に興味の無い人たちにウケる車作りをする＝没個性な車が作られるという悪循環に陥ります。メーカー自身が自分達の製品を「白物家電化」させてしまうと今はよくても今後必ずコストカットの上手な中国や韓国の車に淘汰されてしまう時が来ます。

やはり車というのはファンが付いてなんぼの商品ですので「トヨタの車じゃなきゃダメ」と思ってもらわなければいけないわけです。

そういう意味でもスポーツカーというのは超大事で、メーカーの技術力をアピールしたりメーカー自体にスポーティーなイメージを付けられたりします。またスポーツカーから大衆車にフィードバックされる技術も沢山あります。

なによりスポーツカーは各メーカーの「顔」になりますから「メーカーのファン」を作るためにも必ず必要なのです。日産のGT-Rなんかは凄く分かりやすい例ですよね。日産のスポーツカーと言えば？と聞けば殆どの人がGT-Rと答えるでしょう。

トヨタは現在の豊田章男社長に代わってから凄くイイ方向に変わっていっていると思います。世界でもトップクラスの自動車メーカーであるトヨタがスポーツカーを作り続けてくれればトヨタよりも体力の少ない他社も追従してくれて、また「楽しい車」が選び放題な時代が戻ってくることでしょう。

今の時代に英断をし続けている豊田章男社長とトヨタ自動車は本気で応援しています。

頑張れトヨタ！

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