車のチューニングをする上での準備や考え方を解説している記事です。連載シリーズ記事となっていますのでまだ以前の記事を読んでいない方は先に読んでみて下さい。
火花…というか「燃焼」はエンジンチューニングにとって非常に大事なファクターです。そして点火は燃焼の起点となる重要な要素です。ここまでエンジンに関するチューニングの話が続いていますし、せっかくなので今回は点火に関するチューニングの話をしましょうか。
点火系に関するチューニング
エンジンは基本的に外気を取り込んで薄くしたガソリンを霧状に吹き付けることによって「混合気」を作り出して爆発させてエネルギーを作り出しています。そしてその爆発エネルギーを駆動に変えて自動車は前に進んでいるわけです。図で示すと以下のような行程を踏んでいます。
↑→→→→ | 吸気行程 | 外気を取り込む |
↑ | ↓ | |
↑ | 圧縮行程 | 取り込んだ外気を圧縮 |
↑ | ↓ | |
↑ | 燃焼・膨張行程 | 爆発させて膨張エネルギー発生 |
↑ | ↓ | |
↑←←←← | 排気工程 | 発生したガスを排出する |
基本的にガソリンエンジンはこのような行程を高速で繰り返しています。
そこで上記の図の中で気にして頂きたいのが燃焼・膨張行程で「どうやって爆発を引き起こしているか」です。ガソリンは圧縮したからといって自動的に爆発するわけではありません。
超超高圧縮すれば自然爆発しますがそんなエンジン見たことも聞いたこともないので、ここでは現実問題として「爆発しない」ってことにしときます。
実は表には書かれていませんが燃焼膨張行程にはもう一つ重要な「着火」という工程があるのです。その役割を担っているのが「点火プラグ」です。(見出し下の細長い棒のようなパーツが点火プラグです。)
その点火プラグもエンジンをチューニングする上で非常に重要な物の一つなのです。
点火プラグとは?点火プラグの基本知識。
点火プラグは安価な物から高価な物まで存在して選択肢が多いので割と軽視されるのですが、非常に重要なパーツの一つです。
昔の点火プラグは粗悪品が多く火花の出方が弱かったり、出ても上手く着火してくれないなどの不具合が多くありました。しかし工作技術の向上により現代の車に使われているスパークプラグはほぼそのような不具合は見られなくなっています。
しかしそれはあくまで「実用上では」という条件の上での話です。スポーツカーなどに搭載されているモータースポーツ用にチューニングされたエンジンの場合は話が変わってきます。
プラグには様々な種類が存在していて使用用途も違いますのでエンジンに見合った点火プラグを選択する必要があります。
エンジンごとに使用するべき点火プラグの種類と選び方
点火プラグには「ホットタイプ」と「コールドタイプ」の二種類が存在しています。それぞれは「熱価」と呼ばれる数値で分けられていて数字が小さくなるほど「ホットタイプ」で数字が大きくなるほど「コールドタイプ」となります。
ホットタイプは低回転型のエンジンに向いていて放熱性が低く抑えられています。逆にコールドタイプは高回転型のエンジンに向いていて放熱性が高く設計されています。スポーツカーやチューニングカーのエンジンは基本的にエンジン本体の発熱量が大きいので「コールドタイプ」が使われることが多いです。
「じゃぁ一番コールドなのを付ければいいのか!」と考えたあなた。まだまだですね。
「自分のエンジンに合うのはどんなプラグだろ?」と考えたあなた。素晴らしい!車のチューニングについて大分分かってきていますね。
点火プラグもその他の部品同様「熱価が高ければそれでいい」というものではありません。
点火プラグは適切なプラグを選ばないとエンジンの性能を引き出すことができなくなるばかりか、デチューンになってしまいます。
例えば点火プラグの温度が低すぎる(熱価が高すぎる、コールドタイプに寄りすぎる、放熱性が高すぎる)とプラグにススが堆積してしまい放電が上手く行えなくなります。
逆にプラグ温度が高すぎる(熱価が低すぎる、ホットタイプに寄りすぎる、放熱性が低すぎる、)とプラグの熱で混合気が自然発火してしまい燃焼行程に不具合が生じて上手くエネルギーを作り出すことができなくなります。
だからこそ自分のエンジンに合った適切な点火プラグを選ばなくてはいけないわけです。
点火プラグの見分け方
点火プラグにはコールドタイプとホットタイプがあるわけなのですが、どのように見分ければいいかご存知ですか?
点火プラグには必ず熱価が記載されていますので、その番号を確認します。例えば点火プラグメーカー「NGK」では熱価が大きくなるほどコールドタイプとなりますので、もし自分の車に装着されている点火プラグが5番の場合は6番~10番などから選ぶとよいでしょう。
一般的なのはNGKやDENSOが採用している「数字が大きくなればコールドタイプ」な表記ですが。一部メーカーでは「数字が大きくなればホットタイプ」で記載しているメーカーもありますので注意が必要です。
例:BOSCHの点火プラグは10番から数字が小さくなっていくとコールドタイプとなっている。
点火プラグが合っているかどうかを見極める方法
点火プラグが合っているかどうかを確認するにはプラグを外してプラグ自体の「焼け具合」を確認しましょう。点火プラグの電極部分を見てみると少なからず焼け焦げていると思います。その色がキツネ色だったり白色や灰色に焼けていて電極部分が乾いていたらエンジンに合っている適切な点火プラグだと言えます。
一方で真っ黒になっていたり真っ白になっていたりすると、その点火プラグはエンジンに合っていないので違う熱価の物に交換する必要があります。
具体的な色味についてはHKSのこちらのページが非常に分かりやすく写真付きで解説してありますので一度ご覧ください。
あなたはプラグを選択する時に、馬力やチューニングレベルを基準に選択していませんか。
これは間違いではありませんが、正しくプラグを選択するには使用条件で判断するべきです。
ノーマル車でもサーキット等で激しい走りをする場合には、プラグの番手を上げるべきです。
点火プラグの寿命
点火プラグは常時爆発の中に頭を突っ込んでいるパーツですので当然寿命があります。
材質にもよりますがサーキット走行などの全開走行が多い車の場合はおおよそ2万キロ程度が交換の目安です。
プラグが古くなってくるとエンジンの基本行程である「燃焼・膨張」が上手くいかなくなるので当然エンジンパワーが落ち込んでしまって性能を発揮することができなくなります。
点火プラグは高い物ではありませんので定期的に交換するのがベストです。
点火系をチューニングして強化するメリットは?
ではそんな点火系の性能を強化するメリットはなんでしょうか?
まず一つは始動性がよくなります。これは火花が散りやすくなれば火が付きやすくなるのでイメージしやすいと思います。
次にアイドリングの安定や燃費を向上する効果があります。これは吹いた燃料を効率的に爆発させられるようになるので結果として良くなります。
最後に一番大事な加速性能が上がります。これは着火性能が向上することによってピストン毎の最大エネルギーを発生させやすくなる=エンジン性能を最大限に引き出すことができるようになるからです。
大まかに言えばこの3点が点火系をチューニングするメリットと言えるでしょう。
点火プラグと点火プラグコードをチューニングして強化
エンジンの重要なパーツの一つである点火プラグの重要性は分かって頂けたかと思います。そこでここからは本題の「点火能力の強化方法」を解説していきます。
当然ですが点火プラグの能力を強化すれば点火する性能は上げることができます。例えば市販プラグで性能が高い物の一つとしてイリジウムプラグが挙げられます。中心の電極部分に極細で耐久性に優れたレアメタル金属のイリジウム合金を使用することによって優れたスパーク性能を発揮させることができます。
また点火プラグを変える他にも点火プラグに電気を供給しているプラグコードを社外品に交換するのも非常に効果的なチューニングの一つです。
点火プラグコードの電気抵抗が大きいと点火プラグに大きな電流を流せず安定した火花を飛ばすことができません。しかし社外品の太くて電気抵抗の少ないプラグコードに交換することで安定して強い電気をプラグに流し続けることができてエンジンのパワーを効率的に発揮させることができるようになります。
また点火プラグコードの中にはアースを取る機能を持ったコードも販売されていて、そういったコードに交換することも点火プラグに最大限の仕事をさせる効果的な方法と言えるでしょう。
ちなみに作業の効率を考えるならばプラグ交換時にプラグコードも一緒に交換する事をおすすめします。プラグによっては専用プラグコードが付属しているものもありますので、そういったプラグは専用品を使う事でより強く長い良質な火花を飛ばせるようになります。
点火系チューニングまとめ
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点火系はエンジンの燃焼行程の起点とも言える重要な部分ですから安定した性能が求められるわけです。その重要な要素を数千円の部品が担っているんですから驚きですよね。
チューニング価格的に言えば非常にお手頃なので、熱価は変えずとも材質だけを変えてみるのはアリかもしれません。
それに個人的には点火プラグの交換作業を自分ですることによって「エンジン本体を触る」ことへの抵抗感が取り払えるのでDIYの最初のステップとしても強くお勧めしたいチューニング作業です。
基本メンテナンスでもありますしね。是非一度チャレンジしてみてください。
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